yubataro tohunoyama
豆腐の伝道師
豆腐乃山湯葉太郎
1985年生まれ。ある日、突然豆腐の良さに目覚め、「豆腐の伝道師」を名乗り始める。著作には『豆腐少年の末裔』。音楽活動も行っており、『Tofu meets beets and soy』を昨年リリースしようとしたが、なんとなくダルくなったため、発売しなかった。

腐らずに強さを持つ。
腐らせていいのは豆だけだ。
「っちわ~っす」朝方の押上におからを食べながら現れた豆腐乃山湯葉太郎さん。豆腐の良さを伝える活動を精力的に行っている、豆腐の伝道師だ。全く話題にはなっていないが、そろそろ話題になるはずと地元の小学生から噂されている。今回、あまり忙しくなさそうではあったが、貴重な時間をいただき、伝道師としての活動内容や、自身の恋愛観について話を聞いた。
愛してやりたいなあと思った
――本日はお忙しい中ありがとうございます
豆腐乃山 こちらこそ、朝早くに悪いね
――早速ですが、伝道師になられたきっかけは
豆腐乃山 そうだね。急に、なろうと思ったんだよ。夕飯食べてるときにさ。急に。ひらめいたっていうのかな。神からのお告げっていうの? そういう感じだった。あのときに、豆腐のよさ、伝えなきゃって思ったんだよね。それで、次の日から伝道師って名乗り始めたんだ
――豆腐に魅せられたんですかね
豆腐乃山 そういうとかっこいいけどね(笑) やっぱりさ、豆腐の魅力って、何にでも合うところだと思うわけよ。醤油とか、ねぎとか、しょうがとか、そういう和食から、中華とかにも登場するし、うまいじゃん。最近とかスイーツ化してるのも、気になってる。変わり種っていうか。枝豆豆腐みたいなやつね。まあぶっちゃけ、ああいうの好みじゃないんだけど(笑)
白い。四角い。ベーシック。それがいいね。やっぱりね。俺が一番好きなのは、清純そうでしっかりしてそうなのに、きめが細かくてすぐ崩れちゃう、絹豆腐かな。食べながら、愛してやりたいなあって思うんだよね。いつもいつも
――まるで恋のようですね
豆腐乃山 ほんとひとめぼれだよね。豆腐じゃなくて米の話になって恐縮だけどさ(笑)まあ米との相性も抜群だよね。そこも好きかな。なにと合わせても美味しいよね。どこに連れて行っても大丈夫な彼女って感じ(笑)
――米との相性とは?
豆腐乃山 冷や奴をおかずにほかほかのごはんを食べるとすごくおいしい。冷静と情熱の間、って感じ?(笑)あれを食べてるときに、日本人でよかったなーって思うね。マジで。あと、俺が好きなのは、豆腐の上に納豆、かつおぶし、みょうが、ねぎ、こしょう、七味唐辛子をばーってかけてぐっちゃぐちゃにして食べるやつ。何がなんだかわかんねーし、見た目が汚いんだけど、うっめーんだよ。あれがあればおかずいらないね。
一日一回食べてる
――それらの経験が豆腐の良さを伝える活動に繋がったということですね。
豆腐乃山 まあ、言われてみればそうかもしれない。
――具体的にはどういった活動をされているんですか?
豆腐乃山 豆腐を食べてる。
――それは、どちらで、どのくらいの頻度で?
豆腐乃山 自宅で。一日一回くらい。
――は?
豆腐乃山 だから、一日一回、自宅で、豆腐、食べてる。
――食べ方に工夫をされているとか
豆腐乃山 冷や奴で食べてる。
――薬味は?
豆腐乃山 さっき言ったやつくらい? でもあれは豪華版だから基本的には醤油だけって感じ。
――こう、おいしい豆腐の食べ方をSNSで発信するみたいなこともされてない?
豆腐乃山 なんで?
――え?
豆腐乃山 なんでそんなめんどくさいことしなきゃいけないの?
褒めてほしいんだけど
――伝道師のわりに、豆腐の良さを誰にも伝えてないじゃないですか
豆腐乃山 えーそうかな? 俺のわりには結構がんばってるよ。つーか、そうやってすぐなんでもできてないって言うの、俺、ほんとだめなわけ。褒められて伸びるタイプだから、褒めてほしいんだけど。
――はあ……
豆腐乃山 あ!あるよ、あるある、豆腐の良さ伝えたエピソードある。しっかり伝えてた。うっかりしてた。
――なんでしょう?
豆腐乃山 付き合う彼女とは確実に豆腐、一緒に、食べてる。
――はーーー
豆腐乃山 でさ、豆腐食べてるとき、彼女が”おいしいね”って言うじゃん。俺、嬉しくって”お前、豆腐みたいなところあるよな”って言っちゃうの(笑)思わず(笑)これ、俺的にはアイラブユーみたいなものだから、このセリフはハイレベルな愛の告白なの(笑)
――そうですか
豆腐乃山 いやー豆腐食べてる、豆腐みたいな彼女って素晴らしいよな。超抱きしめたい。
恋なんて豆腐と同じ
――現在お付き合いされてる方はいらっしゃるんですか?
豆腐乃山 いないね。恋なんて豆腐だから。最初は白くて四角くても、すべて脆く、崩れていくよね
――そうですか。
豆腐乃山 そうだね。
――伝道師以外にお仕事はされてるんですか?
豆腐乃山 たまに派遣のアルバイトやってるかな。
――豆腐関係の?
豆腐乃山 ベルトコンベアで流れてくるケーキにイチゴ載せたり、刺身にたんぽぽ置いたりしてる。
――……。
豆腐乃山 えー何? どうして黙っちゃったの? 具合悪い? 豆腐食べる?
――だって、豆腐の伝道師って聞いてたのに、話と違うじゃないですか……。
豆腐乃山 伝導するのって難しいわけよ。電動でできないからね。
――うまいこと言ったと思ってます?
豆腐乃山 そのつもりだけど……。
――はーーーー意味わかんねえなー。
豆腐乃山 えっ、なに、えっ、失礼じゃない? 何、どうしたの? 急に?
――本日はありがとうございました
豆腐乃山 えーこんな終わり方ある? 豆腐だったら今頃崩れちゃってるよ? もう食べれないよ? あれ? ちょっと、どこ行くの? さっき日本酒2合頼んじゃったんだけど、俺一人で飲めないよ。っていうかあれ? おーい!